「冥土行進曲」

  • 夢野久作全集もちょいちょい読む。「冥土行進曲」けしてシュールなエロゲのタイトルではありません。

動脈瘤によってあと二週間の命を宣告されたオトコが、残される弟のために両親の仇であり、裏社会の大物でもある伯父を殺害しようとする話。医者である弟から大動脈瘤である事を告白された主人公は心配かけまいと豪傑ぶって笑いながら気勢を張るんですが、面白いので抜粋。

「アハハハハハ。済まん済まん。余計な心配かけて済まん。オレの動脈瘤満州直輸入だ。大原大将閣下の護衛で哈爾濱(ハルピン)に行った時に、露助の女からもらった病毒に違いないのだよ。アハハハハ。自業自得だ。……しかし……よく言ってくれた」

うん、豪傑。
あと、日本の軍事探偵である父親が何気なく妻に隠し財産について打ち明け、愚かなその妻はコトを弟につい漏らしてしまう。伯父は義弟が軍事探偵であることをGPUに密告し、その結果父親は露人に誘拐され殺害されてしまう。その報道を聞いた妻は「流産をした上に発狂して、何も喰わずに餓死して」しまう。
「流産をした上に発狂して、何も喰わずに餓死」短い一文でこんだけ衝撃的なエピソードもないかと。