「光車よ、まわれ!」読了。

こどものもうそうblogに触発されて購入。読了。


ある日突然、日常の中の異常に気付いた主人公・一郎は奇怪な事件に巻き込まれ、少年少女たちの冒険がはじまる…。
ストーリィについては王道なクエストもので、主人公少年のイニシエーションをダーク(?)ファンタジーを通して描いたものなんですが
なんとなく気にかかるのが途中で挿入される少女・ルミのエピソード。


主人公とヒロインが出会って共に冒険するのはよくある話で、この作品でも一郎は物語のキィパーソンとなる「神秘的な美少女・龍子」と出会い、新たな世界へと導かれる。
でも、彼女はヒロインではない。 パーティーのリーダーであり、物語の導き手だ。


ヒロインは中盤でいきなり登場する隣の学校の少女・ルミだ。一郎がピンチに陥った時に彼と出会い、ほのかに惹かれ合っている。
それも面と向かってどうこうってのじゃない。何かの折にふと互いを思い浮かべる、とても幼稚なもので、色恋沙汰なんてものじゃない。


しかも、この物語の一番のファンタジーである「さかさまの国」に行った事があるのはこの二人だけだ。そして最終的に物語を共有してゆくのもこの二人だけだ。


もう一つ印象に残ったのが、ルミがクライマックスで着ていた真っ赤なコートだ。作中でも「ずいぶん派手」で「目立ちすぎる」ほどの赤いコート。
雨の降る視界の悪い水路を渡る、赤色のコートの少女。……あれ、これってこの章の冒頭で話してた「人間の体というものは、ひとつの都会なのだ」と、そこから一郎が考えた

人間のからだが都会で、都会も人間のからだなのだとすると、ぼくらがいまこうしてくらしている都会も、だれかすっごく大きなひとりの人間のからだそのものではないか。

ってこと?


あと、偶々昨日読んだ映画秘宝の「町山智浩Yesterday Once more」にて
「赤い影」(73年英伊合作)という映画で、ちいさな「赤頭巾」のイメージが恐怖のアイコンとなったってのも印象深い。
そういえばあのクソ長い「シンドラーのリスト」で、唯一カラーだったのも確か赤い少女だったんじゃなかったっけ?


そんなことをつらつらと考えてました。

光車よ、まわれ! (ピュアフル文庫)

光車よ、まわれ! (ピュアフル文庫)