「屍者の帝国」読了。

伊藤計劃が残し、円城塔が紡いだ鬼才と異才による物語。

屍者の帝国

屍者の帝国

死者に疑似魂をインストールされた屍者が様々な労働、活動、機能として活用される19世紀末。
英国の諜報部員、ジョン・ワトソンは「屍者の帝国」の調査という密命を受け、アフガニスタンに向かう。そして…。


余命幾許を宣言された伊藤計劃が「屍者」についての物語を書き始めると言う、悪い冗談のような話を受け止めて引き継がれる、その友人であり、現代言語表現の最先端によるハイブリッド。
19世紀末ロンドンから、世界を縦横無尽に駆けるうえ、虚実の境なく散りばめられる偉人達の名前が作品と物語のフックになって、世界観に浸るだけで楽しくなってくる。
伊藤計劃が残したプロローグに起因した3部作それぞれに、異なるジャンルの物語を描きつつ、伊藤計劃によるMGSのようなミリタリとSFの類稀なる知識の深さから
円城塔による言葉と意識の整然としたなかに垣間見える爽やかさが相まって、最終的に円城塔らしい着地点に落ち着いていて、まるで何かの騙し絵のような不思議な読後感が得られた。