「白鳥の歌なんか聞こえない」読了。
薫君サーガ第二弾ー。っつって読了したらデスね、なんとこれ、第三弾なんだって。えー!
だってカバー折り返しとか、巻末の既刊案内見たら「赤頭巾〜」「白鳥の歌〜」「さよなら〜」「僕の大好きな〜」の順なのに!!
でも分類番号みたいなの見たら
「赤頭巾〜」 し-18-9
「白鳥の歌〜」 し-18-2
「さよなら〜」 し-18-11
「僕の大好きな〜」し-18-12
になってる。……どゆこと?
まァ話自体は独立してたんでいいや。薫君と幼なじみの由美がであった女性と、その祖父。
彼はあらゆる知識と経験と魅力を備えた完璧超人だったが、年老いた今、死の淵に伏せていた。
その彼の魅力と、「死にゆくもの、滅びゆくもの」に惹かれる薫君と由美。
けれども薫君は、その「死にゆくもの、滅びゆくもの」に惹かれることを拒絶する。
感情的にも、道徳的にも、拒絶することも目をそらすこともはばかれる白鳥の歌のようなその「死にゆくもの、滅びゆくもの」を
けれども薫君はそれに惹かれ、捕らわれることをどうしても拒否してしまう。
以下引用
「ほんとうになんなのかなあ。沈んでゆく夕日を見ていると、本当に哀しくて淋しくてそして美しいと思うわ。滅びゆくものの悲しさっていうのかしら。そして、それを見つめ続けていると、このあたし、この自分のまなざしそのものが、いつの間にかとても優しく哀しく柔らかくなっていくような気がする。そしてそのまなざしで眺めると、この世界はみんなすごく空しくてはかなくて、でも美しい許せるもののように見えてくる……。」
「……。」
「でも、問題はそれからなんだわ。なんなのかしら。あたしの中に、そういうまなざしそのものに、ひどく反撥する何かがあるの。そういうまなざしを持つこと自体がすごく危険だと知らせるような何か……。あたしは、ほら、こんなにも若くて健康で、生きているんだ、しっかりしなくちゃいけないっていうようななにかそんな気持があたしをつき上げる。なにか、あたしがこんなにも若くて、元気に生きているってことを、しっかりと確かめたいような、そんな衝動に駆られる。沈んでゆく夕日のように、優しく静かで美しくてといったことも、それはまあそれとしていいけれど、でもその一方で、冗談じゃない、カッコ悪くても何でもいいから、ナリフリかまわずメチャクチャになって、でも力いっぱい生きたい、傷ついても苦しんでもみっともなくてもなんでもいいから、精いっぱい生きたい……。」
その相反する感情を常態に治めるためのメカニズムが葬儀なのかしら。
- 作者: 庄司薫
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2002/10/10
- メディア: 文庫
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