「ディスコ探偵水曜日」消化中。

っつーワケで下巻突入。上巻ラストの惨劇からブツリと途切れ、踊場水太郎とノーマ・ブラウンの宇宙論アメリカはトロイの学校の天文部の部室で繰り広げられる。
面食らいながら繰り広げられる宇宙論をどうにか半分ぐらい理解しようと読みすすめ、シーンが水太郎の住まいである孤児院へと移る。
そして起こるムチ打ち男爵の惨劇。そして世界が繋がる。弱さの罪悪について議論する。
そしてパイン・ハウスで黒い鳥の男に立ち向かうために名探偵達と多元宇宙と時空について議論する。そして〆に水星Cが現れ、行動を喚起する。
黒い鳥の男に暴行を受ける梢を助けるためにもういちどあの部屋へと時空を越え、文字通り壁にぶち当たる。惨劇を目前に壁を越える方法を思索する。
そしてまた時空を飛ばされ、もうひとつの謎に行き当たる。思索は世界の壁へと至り、世界の壁を追う際に、2019年に飛んでしまう。
13年の時を経た西暁町の見慣れない建物に見覚えのある名前を目にする。そして伏線が張られた人物と出会い、次の展開へと移る。


近未来に寿命がなくなる世界でのインタビュー

「親は子を育てれば仕事は終わりやわの。孫は褒美や。曾孫なんかはもう、奇跡やわな」
「いえいえ、お孫さんも曾孫さんも、普通に授かって、一緒に暮らしていけるんですよ、今は。それに、お孫さんや曾孫さんたちだっておじいさんをなくしたら悲しむと思いますけど」
「悲しんでもらえたら十分。老いて死ねたらそれが幸せや。苦しんで死んでも、それが授かりものや。子と孫と同じやな。人生で貰うもんは楽しいもんも哀しいもんも辛いもんも、全部ありがたいもんなんやで。悲しみっていうのも、やっぱりいいもんや」
「でもそれって人生を放棄しているような…投げやりな感じがしますけど。それに、周りの人の愛情をないがしろにしてませんか?」
「あんたらの言う周りの人の愛情なんて、私らからしたらわがままなだけやわな」
「この子供を攫ってる男のやってることこそわがままじゃありませんか」
「あのなあ…人の信念と、わがままは違うやろ?」…

最後の二行がそれ以前の文脈ないとちょっとアレだけど、感銘を受けたよ。禅?仏教?
もういっちょ。

「お前の人間理解なんてそんなものだよ。日本人のことも判んないだろ?本当は。何でもサムライハラキリで想像してるだけだもんな。俺にはもうちょっと判るぜ、日本人が梢式を拒否する理由。死にたがりとかじゃない。死ぬのはきっとどこの国のやつとも同じくらい怖いだろうよ。でも持って生まれたものに何も足さず何も引かず、そのままを受け取って生きて死んでくんだよ。そういうのを美しく感じてんだよきっと。日本人が桜を好むのは、あの薄いピンク色が綺麗だからってだけじゃないぜ?儚く散ってく様が、与えられた寿命の尊さを思わせて、そこに美を感じてるんだ。日本人は桜の花びらを枝に貼り付けたりしない。品種改良で花盛りを長引かせようとしたりもしない。散る花を眺めて、次の春にまた咲くのを待つだけだ。そもそもお前、寿命って漢字を書けるのか?寿命の寿はコトブキ、お祝いごとだよ。与えられた命はそのままで祝うべきもの、十分に長いものなんだ。日本に来ていて良かったぜ。お前らの糞みたいな宣伝に騙されずに済んだからな」
JJが俺を睨んでいる。「…で、誰にも褒められないカミカゼアタックでみなに迷惑をかけまくるって訳か。人生を粗末にしといて何が寿命だバーロー」
俺自身意地を張って口先で言い返しているだけのつもりだったが、いつの間にか本当に力を取り戻している。「カミカゼアタックが人生や命を粗末にしてるって思うならやっぱりお前は日本人から遠いぜJJ。大儀のために命を燃やして見せる光栄に打ち震えて日本人は万歳を叫ぶんだ。自殺とは真逆だよ。死じゃない。生こそ万歳だ。俺のやることだってそうだ。さっき防犯カメラに映った俺を見ただろ?あの笑顔がまさしく俺の万歳だ。俺には判る。俺の未来は明るいぜ。充実感に満ち溢れて毎日子供を攫うだろう。クリスタルクリアな俺の両親とともにな」

カッコイイ。けど、もうそんな日本人多くないと思うよ。どうだろう?


とりあえずアト半分。いや、全然おとしどころわかんねーわ。

ディスコ探偵水曜日〈下〉

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