「ハサミ男」再読。

読む本がないので殊能将之の「ハサミ男」を再読(ゲームはどうした)
この作品は終盤で衝撃の事実が発覚するので、再読時は全く違うイメージで読むことになって面白い。
スリードの技巧がよく出来てるし、マニアックな伏線も面白い。
それだけじゃなく、ハサミ男と「医師」の会話がシニカルかつユーモラスで面白い。
テレビでハサミ男の特番を観賞するときのコメンテータたちの発言によるハサミ男イメージが愉快すぎる。

朝からワイドショーを視聴した結論は、こうだった。
ハサミ男は快楽殺人者で、サディストで、もしかしたら性的不能者で、国内外の連続殺人文献に精通していて、イギリスのなんとかいうロックバンドのファンで、ゲームマニアである。
それがわたしの内面であり、深層心理であり、無意識であり、心の中の暗闇に潜む怪物の正体なのだ。
専門家の皆さん、ありがとう。
しかし、私の知りたい情報は何も得られなかった。

警察たちの精神鑑定と、安定剤についての会話も面白かった。

「そのとおりだよ。脳内物質さえコントロールすれば、万事オーケイ。俺たちの行動はすべて、偉大なる脳内物質に支配されてるんだ!」
村木は両手を広げて、預言者めいた口調になった。
そのうち製薬会社は抗ヤンキー剤なるものを開発するであろう。行為障害の画期的な治療薬。こいつを一日一錠服用するだけで、リーゼントに剃り込みを入れたり、ビーチ・サンダルを履いてウンコ坐りする症状が改善される」
「今どき、そんなわかりやすい不良はいませんよ」
進藤が笑いながら言った。

著者のシュノーたん自身、一時期ウェルニッケ脳症という器質性の鬱病にかかったことがあるらしく、その際の担当医との会話で疑問を抱いたらしい。

わたしは5年ほど前、器質性の鬱病(ウェルニッケ脳症って病気ですけど)と診断された。これはビタミンB1の欠乏によって起こる一種の栄養失調なんだが、そのときの担当医がこんな話をした。
「真冬にホームレスの人が公園で凍死したりするでしょう。普通、体の上に雪が積もって、凍死するほど寒くなったら、じっとしてなんかいられません。ああいう人たちはビタミンB1欠乏による器質性の鬱状態にあるから、凍死するような寒さになっても動きたくなくなるんです」
 そのときは一瞬、なるほど、と思ったのだが、すぐに考え直した。じゃあ、公園や駅前のホームレスにビタミン剤を配ったら、みんな元気に、人生に前向きになるのか?
a day in the life of mercy snow memo2000年10月

って言うか、新作を書いてよセンセー…。