「TAP」読了。

短篇集のわりに妙に読みづらかった…。おかしーなー、他の短編集はここまで読みづらくなかったと思うんだが。
基本的に題材は面白いんだけど、オチがわからない。オチてるのかどうかもわからない。俺の頭が悪いのか…。
とりあえず琴線にふれたトコをピックアップ。

「お前は賭博がどういうものか分かっているの? 賭博というのは、一種の税金なんだ。愚かさに対する税金さ。強欲に対する税金。お金の持ち主はランダムに変わることがあるけれど、全体的なお金の流れは、一方向にしか向かわない――政府や、カジノ経営者や、胴元や、犯罪組織のほうへだ。おまえが賭けに勝つことがあっても、そいつら相手に勝ちはおさめられない。結局そいつらは自分達の取り分はちゃんと取る。おまえは、文無しの負け犬ども全員を相手に勝ったというだけの話なんだよ」

ああ、これは自分のギャンブルに対するスタンスですわ。賭け事は、宝くじを含めて参加するよりひらく方が儲かるのだよ。基本的に犯罪だけど。

そしてわたしはこれまで、千回はこうした場面に出くわしてきた――けれどいまでも、かけるべき言葉がわからない。激しい悲しみは知識の薄膜など剥ぎとってしまう。『人生は道徳劇ではない』『病気は病気にすぎない。隠された意味などこめられていない』『わたし達は神を鎮めるのに失敗したのでも、四大元素の精霊との駆け引きをしくじったのでもなく、そもそもそんなものは存在しない』正気の大人なら、誰でもこうしたことは知っている――しかしそれでも、知識は皮相的なものでしかない。あるレベルではわたし達は、すべての中でもっとも苦労して手に入れた真実を、いまだ信じ込めずにいるのだ。『宇宙は人間になど無関心だ』ということを。

なんていうんだっけ、実存主義

それでも、ぼくはときどき考えてしまう、いったいどれくらいの人が、あの夜の支離滅裂な若者とまったく同じものの見かたをしているのだろう、と。国のことではなく、人種のことでもなく、しかし、われわれとやつらを隔てる、まったく独自の境界線を引いている人々。長靴を履いてカメラの前で行使してみせる道化達ではなく、知性があり、資力があり、先見の明がある人々。そして公の場に出てこない人々。

バカの壁ってやつですかね。盲信や、狂信とも言う?

TAP (奇想コレクション)

TAP (奇想コレクション)