「箱男」読了。

初・安倍公房な「箱男」読了。どうでもいいけど一時期「あべのこうぼう」って読んでましたよ。陰陽師かっつーの。
メチャクチャ有名な作品なんであらすじなんて必要ないと思うんですが、検索してみたら面白い動画が見つかったので貼ってみる。

意外と覗き窓大きいな。これなんなんだろうと思って調べてみたら、こんなのがあったらしい。一部引用。

文學ト云フ事(ぶんがくということ)は、フジテレビの深夜帯(JOCX-TV2)で1994年に放送された番組。

毎回、日本の文学作品を一つ取り上げてその作品の映画の予告編を模した映像作品を放送、「文學ノ予告人」がその作品について詳しく解説すると言う物で、非常に質の高い予告編を製作した演出家の片岡Kを一躍有名にし、今なお、再放送やソフト化を望むファンが多い番組である。

へー。面白そう。DVDにならんかね。いや、それはいいとして。

正直あんまり理解できたとは言いがたいんですが、それでも印象に残ったトコを引用。
箱男を意識してしまい、接触し、自らもが箱男になってしまったAについて

(略)一度でも、匿名の市民だけのための、匿名の都市――扉と言う扉が、誰のためにもへだてなく開かれていて、他人どうしだろうと、とくに身構える必要はなく、逆立ちして歩こうと、道端で眠り込もうと、咎められず、人々を呼び止めるのに、特別な許可はいらず、歌自慢なら、いくら勝手に歌いかけようと自由だし、それが済めば、いつでも好きな時に、無名の人ごみにまぎれ込むことが出来る、そんな街――のことを、一度でもいいから思い描き、夢みたことのあるものだったら、他人事ではない、つねにAと同じ危険にさらされているはずなのだ。

この「匿名の市民だけのための、匿名の都市」って、今現在で考えると、どう考えてもインターネット空間としか思えない。
とくに2ch系の巨大匿名掲示板や、「歌自慢なら〜」のくだりは動画共有サイトが極端な例だ。他にも個人サイトやブログなども思い当たる。
箱男 インターネット」でググって見たら同じことを連想した人もいるみたい。ただ、この人は「箱男」は読んでないみたいだが。( ´゚д゚`)えー。
もし、現代を舞台にして「箱男」をリメイクしてみるとしたら、匿名性と不可視性に守られ世界を覗きみる箱男は部屋に引きこもってインターネットを歩き回るヒキコモリそのものとしか思えない。そうなると、看護婦も偽箱男も脳内妄想世界の住人となるのだろうか?強さにあこがれアングルスコープで覗き見しようとした未熟な少年Dが「見る側」から「見られる側」に回ってしまったのは、山田ウイルスや、fushianaトラップ、ブログ炎上のようなものなのだろうか?


そう考えてゆくと73年にこの作品を発表した安倍公房の先見の明には寒気すら感じるなァ。

箱男 (新潮文庫)

箱男 (新潮文庫)