「電化製品列伝」読了。

長嶋有の、物語に出てくる家電に焦点を当てた書評集。なぜ電化製品なのかは、読めばわかってしまうのが長嶋有のすごいところか。
自らの作品に、思いを込めて家電をガジェットとして使用するも、全く注目されないのに業を煮やした著者が「じゃあ自分で語っちゃうもん」と書きはじめ
自作だけじゃ流石になんだなと思い直して様々な作品の電化製品に注目する。


その着眼点と考察がすごい。例えば乾電池については、川上弘美著の「センセイと鞄」においてセンセイが捨てられずに取って置いてある乾電池。
その乾電池の特性として、「外見では使用前、使用後の見分けが全くつかない」ことによる「捨てられない」という、ある情を喚起させる。
また、その乾電池と繋がって出てくる「テスター」にも、その物語において重要なガジェットとなることを考察する。


正直、自分は物語を消化するときに、多分上っ面だけ消費してちゃんと読めていない。精々、極所的なアンテナに引っ掛かった箇所を、なぜかは判らずに一応チェックする程度だ。
だけれども、この家電書評のように何かひとつの高いアンテナを立てて、それがキャッチしたものに焦点を当て、そこから物語を考察すると言う読み方を今更ながら実感した。


俺は今まで何を読んでいたんだろう。

電化製品列伝

電化製品列伝

地味に深くエウレカ