「海の底」読了。

昨日に引き続き、有川浩自衛隊三部作、海自編読了。

海の底 (角川文庫)

海の底 (角川文庫)

春、潜水艦勤務の実習生夏木と冬原の2人が巻き込まれるモンスターパニック。突如、海から現れるのは人並みはあろうかと言う巨大なザリガニ。
その硬い甲羅とハサミで、イベントに集まった人々を蹂躙する最中、夏木と冬原は幾人かの子供達とともに、潜水艦の中に避難し、しばらくの日数をやり過ごす。
避難した子達は、同じ町内の小学生から中学生の男の子達と、一人の女子高生。彼らを庇護しながらいつ終わるとも知れない艦内生活を過ごす。
そして、外では警察と、機動隊と、自衛隊と、米軍との、歪なパワーゲームが展開されていた。


まァ、大まかにいって軍事ネタと、色恋沙汰が繰り広げられるんですが、それらに疎い自分は、身のうちに潜む永遠の少年の心が一人のオトコノコにシンパシーを感じました。
艦内に避難した子供達は、同じ町内にて少し特殊な関係にある。
唯一の女子高生・森生望を除く、男子達の間で一番の年上の中学三年生3人の一人・遠藤圭介はとある理由にて歪な権力を持つ。
彼に歯向かうことは、その町内の子供達のコミュニティの間で村八分になることを意味する。
ちょっとここらへんの設定が、オトコノコのコミュニティらしくないなァと思ってたんですが、ちゃんと納得出来る理由がありました。


んで、この少年は、この艦内生活において生死を賭けた通過儀礼を体験することにより、自らの世界の歪さと、過ちを認識し、「庇護」という呪縛に立ち向かうことを決意します。
「もしかしたら自分は怠惰だったのかもしれない」それに気付き、人の痛みを知り、歩き出すことを覚えたのなら、彼はきっといい男になる。そう思った。


しかし、有川作品にはろくな母親が出てこないなァ。