「苦役列車」表題作読了。

先日の芥川賞に輝いた作品。もう文庫化してたので購入。とりあえず表題作を読了。

苦役列車 (新潮文庫)

腐れ外道・北町貫多サーガ、１９歳港湾人足青春物語。　青春って……。
生来の気質の荒さに加えて、父親の性犯罪によって人生に支障をきたし、諦観と開き直りの果てに中卒の日雇い労働者に身をやつした北町貫多の１９歳。
自虐と軽蔑をないまぜにこじらせて、酒と風俗にのめり込みながら最底辺の三畳一間の家賃を踏み倒す日雇い労働の日々。
同年代の学生をねたむ生活の中、たまさか親交を深められるようになった専門学生との昵懇の日々と、その結末。

内的要因と外的要因と、自身と社会と、価値観と世間体と、感情と理性と。
通底した価値観と、時代の風俗による価値観と……。あらゆる組み合わせが綯い交ぜになって絡まって、結果、走り出す苦役の列車。
心にともる唯一の灯。藤澤清造に出会う前の、北町貫多の「せいしゅん」私小説であった……。