「非現実の王国で ヘンリー・ダーガーの謎」鑑賞。

っつーワケでさっそく見に行きましたい。金曜は会員様1000円の日だったので、それなりに多かった。まァ十数人ですが。
なんつーか、客層が親近感をおぼえる、こざっぱりしたサブカル兄ちゃんが多かったですね。自分で言うのもなんですが。あと女性二人連れとか。


作品は、一部で有名なアウトサイダー・アーティスト ヘンリー・ダーガーの生涯と、その唯一の作品「非現実の王国」をリンクさせて綴られる自伝とフィクションの入り混じった物語。
さっくりヘンリー・ダーガーについて説明すると、孤独で貧乏なじーさんが死んだアト、大家が部屋を片付けようとしたら、膨大なるひとつの物語が発見された。
その病院の掃除夫であった老人は、世間と係わることなく、一人部屋にこもって一生涯その物語を書き綴っていた。というもの。
まァその作品が、子供奴隷を解放するために戦う7人の「ヴィヴィアン・ガールズ」という少女達の物語で、奇妙なオリジナルファンタジーの世界に住む少女達と、残虐な軍人との戦争を1万ページを超える活字と、新聞記事や、写真、コミックなどをトレースして描く一枚3メートルにも及ぶ巨大なイラストを多数組み合わせたものすごい大作だった。
んで、そのイラストを一部アニメーションに加工してその物語を追ってゆくというもの。


彼の生い立ちが物語にダイレクトに影響を与えていて、少年時代の奇行、奇癖によるいじめと退学処分。知的障害児の保護施設での体験。父親が死んだアトに送られた洲営農場。その施設からの逃走。そして掃除夫となり、物語を創作しながら細々と暮らすも、第一次大戦が勃発し、徴兵される。これらの理不尽な現実が、物語の中で主人公の少女達に越えるべき試練として降りかかる。
おそらくは、彼の身に降りかかる不幸には何か意味があると信じたくて、この物語に自らを少女達とシンクロさせて綴っていったんだと思う。
また、この物語の中に、戦う少女達の味方として、ヘンリー・ダーガー自身も登場する。彼は少女達とともに大人たちの暴力に立ち向かうが、「物語の中では全てが思い通りになるが、現実には何一つ叶うことがない」という事実に気付き、世界に絶望した時、物語中のダーガーも軍人側に寝返って、少女達を殺戮してしまう。
彼の世界観が全てダイレクトに物語にフィードバックする中、最終的に物語は全面戦争が起こり、ヴィヴィアン・ガールズは軍人達のリーダーを追い詰め、彼は改心するトコで終わる。


しかし、もうひとつのエンディングとして、改心したというのは虚偽で、最後に裏切られた少女達は皆殺しになるという終末もあった。
おそらく、ダーガー自身が世界に対して絶望しきれていなかったことが、エンディングが2種類存在することになったのだろう…と映画は締めくくる。


って言うか、どう考えても世界の全てに絶望したから、エンディングのその後で悲劇が起こってるんだと思うんだが…。


いや、なかなか面白い映画でした。生い立ちと、作品の向こうに透けて見える一人の孤独な老人について色々と想像できるとこが面白いですな。


見終わったアトに階下の紀伊国屋で「非現実の王国」を収録した映画の副読本が置いてあり、面白そーと思ったんですが…
6500円でした。たけーよ!

ヘンリー・ダーガー 非現実の王国で

ヘンリー・ダーガー 非現実の王国で