「夜と霧」観賞。

MGSの小島監督の本で紹介され、興味を持った作品。
ナチス・ドイツホロコーストを告発したドキュメンタリ映画。その衝撃的な内容に、日本公開時にはいくつかのシーンがカットされたらしい。
詳しい内容についてはこのサイトが詳しい。
上記の本で前もって紹介されてはいたんだが、それでも実際に無造作に打ち捨てられた死体の山のフィルムを見るのは胸に迫るものがある。
金ダライに積み上げられる頭部、薪の様に積み上げられる死体。文字通り骨と皮になり硬直する脚。うずたかく積み上げられる遺品。
遺品と共に果てなく積み上げられる女性の頭髪で、毛布が作られ、地面に敷き詰められた人骨は肥料にされ、死体で石鹸を作ろうとし、皮膚にはシンボルイラストが描かれている。
そしてこの映画で一番の衝撃は、ブルトーザによって深い穴へ押しやられる地面いっぱいの死体。
この表現は適切ではないが、その無造作に押しやられる死体はまるで過剰生産で破棄されるキャベツのニュース映像を連想した。
だけれども、捨てられているのはすべて人間で、この世に生を受け、人として生きるべき人生があったはずなのだ。


モノクロの記録映像と交互にフルカラーで映し出される廃墟となった無人の収容所は、そこにあった空気を今もなお抱えている。
そして最後にナレーターは語る。

信じる人、あるいは信じない人
廃墟の下で死んだ、怪物を見つめる我々は
遠ざかる映像の前で希望が回復したふりをする
ある国のある時期における特別な話と言い聞かせ
消えやらぬ悲鳴に耳を貸さぬ我々がいる

夜と霧 [DVD]

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